Drawing: Nuno Henriques

Drawing: Nuno Henriques

Castanheira, April 3, 2014

小さな村で葦のカゴを背負った人が写っている写真というのは、何処を探してもなかなか見つからないのではないだろうか。田舎暮らしをする人にとって、カゴというものはあまりにも日常に密着したものであり、わざわざ写真を撮るようなものでないからである。当時の人々にとって、写真とは晴れの日の記念に撮るものであったと私は考える。

全てはここから始まった。かつて私の村では誰もが何らかの形でカゴを作っていたものだ。しかし、そのカゴを編み始めた最初の人物は私の祖父であった。私の祖父こそ、一見したところ脆そうな材料を使って丈夫な道具を作り出したこの村の発明者だった。

葦のカゴは何処に行っても人気があり、今日のポルトガルにおいては文化遺産の一部でもある。しかしそれでもなおこの職人芸は、遅かれ早かれ失われてしまう危険を多く含んでいる。この職人芸を受け継ぐ最後の人々 ― 女性や男性たち ― がこの世を去ってしまったら、そのときは葦のカゴ作りという、ポルトガルの伝統がなくなってしまうかもしれない。それが実際どうなるのかは、時間が経ってみなければ分からない。

しかし、だからこそトニオ・アベルはこの素晴らしい芸術を守り、あなたと共にその喜びを分かち合いたいと思っている。器用な手先からひとつひとつ編み出されるカゴは麻、葦、ヤナギと全て自然界の材料を用いて、エコロジーかつサスティナブルであることが根底にある。どのカゴも全て、何代にも渡って伝えられてきた技術を守り、必ずハンドメイドで作られている。そして私たち職人は、この先もこの伝統を守り続けていきたいと思っている。

カゴを編むのは手間のかかる仕事である。まず、多くの準備を必要とする。葦を切り、洗い、乾かし、漂白する必要がある。この後、様々な色に染め、再び乾かさなければならない。

エミリアはカゴ編み ― つまりカゴ作りのメインの作業 ― を開始する前に十字を切る。編み手は退屈しないよう、通常二人で作業をする。二人は話をしたり、年齢を重ねて出てきた節々の痛みを嘆いたりしながら作業を進めていく。編み手の記憶がカゴの模様を編み出すのはこの瞬間である。器用な手先が機械のような速さでカゴを編み上げていく間、相手の職人が何か話している。こうしてひとつのカゴが編み上がるまで、約一時間から一時間半ほどかかる。

私の村には、まだ沢山のカゴが作られていたころから人々が守り続けている無言の掟がある。カゴの側面の模様は、それぞれの家ごとに異なる色が使われている。現在ではもうカゴ作りをしている家は二軒ほどしかなく、そのうち一軒は緑、もう一軒は赤である。着色をした後、ヤナギの把手が取りつけられる。傍目にはシンプルな作業に見えるけれども、実際は手先の器用な職人にしか出来ない技である。

This text was translated from German and English to Japanese with the valuable help of Beate Wonde. Many thanks, Beate!